下らなくも愛しい日常
「ねぇリボ-ン、最近よく思い出すんだ」
呼び出した執務室の机の上で、軽く腕を組んで綱吉は目の前の漆黒の少年に声をかけた。
細身のシルエットのダ-クス-ツに、しなやかな少年特有の危うさをもった身を包み、隙なく整えられた髪に続く秀麗な額から頬にかけてのラインはすべらかに美しい。その中で一際異彩を放つのは黒曜石の様な瞳の老齢した深みだった。
「15年前君と初めて会って、それからは怒濤の日々だったなぁ、獄寺君とか山本とかと友達になるなんて想像もつかなかった。ディ-ノさん見たいに格好良い人が兄代わりになるなんてね。父さんの門外顧問発言には本当に驚いた。ビアンキには何回殺されかけたか。君の愛人はいつも僕を恨んで来るのはなんでかな?」
目線をこちらに一度向けただけで、後はゆったりとソファに腰掛けたまま何の反応も示さない。
だが付き合いの長い綱吉にはそれで充分だった。組んでいた腕を解き、話続ける。
「あんなに子どもと触れ合ったのも最後の経験だね。まぁあまり一般的な子育て経験では無いけれど。可愛かったなぁ同じ位憎たらしかったけど…」
そこで一旦言葉を切り、カプチーノを一口飲む。口の中に柔らかいミルクの風味が広がり、誰かを思い出させる。
「君は、あの頃から僕の最高で最悪の家庭教師だよ。むちゃくちゃで、無理ばかり言う。一介の中学生がマフィアのボスになるなんてね、誰が想像したろう。厳しかったけど、無意味な厳しさではなかった。何時だって理由があって、正しかったよね。」
「お前はダメツナだからな」
その柔かな顔をゆがませ、うつむく。
「ねえ、リボーン」
意味もなく繰り返し呼んでしまう、その名前の意味を察してくれ。
「僕は、ランボも愛しているよ」
今日あった、ランボは背中をかばっていた。一週間前にも、そして、一か月前には足を引きずっていた。
綱吉たちには、わからな。リボーンのいらだち
リボーンは呪いが解けた後、一瞬大人の姿になったかと思うと、徐々にまた幼い姿に戻って行った。
そして、2歳程度で止まり、それからは、通常のスピードで、成長しているようだった。
結局、リボーン達アルコバレーノは、育ち直していく道を示されたのだ。
赤ん坊の姿のリボーンしか知らない綱吉たちには、その苦悩はわからない。
しかも、一時とは言え、元の年齢の体に戻った感覚はどうやったら体から抜けるのだろうか。
膨大な知識と経験。それにいつまでたっても見合わない体格。
その違和感。虚無感、無力感
それらをどうにか、ランボを傷つけることで対処している。
止めることなどできなかった。
ねえ、君は、どれくらいの孤独の中にいるの?
リボーンは綱吉たちにはその苦悩を欠片も見せなかった。
その代わり、ランボにだけはつらくあたった。
何も推し量れない綱吉たちには何も言うことが出来なくて、
それでもランボもリボーンも愛している。どちらもかけがえのない存在なんだ。
そんな上滑りする言葉で、制止を呼び掛ける。
意味はないと知りながら。
「ねえ、愛してるんだよ。リボーン」
どんな姿だって、君は君だ、そう言えたらどんなに・・・
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