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下らなくも愛しい日常
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抱きしめたいのに、伸ばした手をどうすることもできない。
「ごめんな・・・」

人を殺すたびにつぶやく、
ゴメンナ
あんたのこと見ても、どんな無残な死にざまさらされてても、何にも感じれないんだ。
どんな状況でも、心に浮かぶのは一人のことだけで。

「甘いんだよ、そんなんじゃいつか足元すくわれるぞ」


苦々しい声に振り向く。厳しい言葉をつぶやいても、彼は誰より優しいことを知っている。

「相変わらず獄寺はきついなあ」
そんなに一人で突っ張って、高くてきれいな所にいて、周囲を心配して、どれだけの負担を背負っているんだろう。
何時だって彼はだれかのための戦いをする。敵のことすら必死に認め、無駄な痛みを与えず、一瞬でその苦しみが終わるよう、最大限の努力をする。
そんな風に想われる敵にすら嫉妬する。
そういえば、今日はどれだけ殺したのだろう?最近その感覚すら危うい。
どうでもいいからだ。
自分の大切なもの、獄寺や、獄寺が愛するボンゴレに刃向かうものなど、どうでもいい。


「敵に同情してるようじゃ世話ねえな」


なんとなく、転がる死体の数を数えていると獄寺がつぶやく声が聞こえる。

まるで山本を気遣うような響きに、呼吸が苦しくなる。
そんなに辛そうな顔をして、同情しているのはどっちだよ・・・

傷ついて血を流しているのは獄寺の方なのに。
煙草に火をつけるためにうつむけた顔は歪んでいた。
前髪が顔の半分を隠しているが、山本には獄寺が迷子になって途方に暮れた子供のように感じた。

泣けばいいのに・・・
そうすれば、慰められる。

抱きしめたくなってそっと近づいてみる。

間近に見た顔は、つらそうで、思わず伸ばした手を握り、それからわざとらしくないよう、これ以上傷つけないよう、そっと傍らに立ち、軽くぽんと肩を叩いた。

「帰ろう、獄寺。早いとこツナに報告してやらなきゃな、あいつ、心配してたから」
「ああ、そうだな」
綱吉の名前を出したとたんにほっと肩の力を抜いた獄寺に、殺意にも似た気持ちがわき起こる。
自分にはそんな顔むけてくれないくせに!!!
両肩をつかんで、押し倒して、罵って、無理やりすべて壊したくなるような激情を抑えるために、
獄寺の顔を見ないよう、背を向けた。
それでもすべての神経が、彼に向う。

本当は抱きしめたい、慰めたい、自分の方を見ろと言いたい。
でも、獄寺が万人に向ける憐れみや同情の視線を見てしまったら、自分は何をするかわからない。
壊してしまうかもしれない。

重いため息をごまかすために、夕日が落ちる空を見上げた。
彼が、隣に立ってくれればいいのに。

自分が、刀ではなく、バットを握っていたころは、いつでも隣に立っていた。先に行くと、生意気だとか、山本のくせにとよくわからない理屈をこねては、隣に立ち、笑っていた。
だが、いつからだったか、刀に持ち替えた時、喜んでくれると思って覗き込んだ獄寺の顔にひどく傷ついた色を見つけたのは。
まるで、自分が山本から大切なものを奪ったかの様に・・・
それから、獄寺は加害者のように懺悔の気持ちを向けてくる。山本を歪ませたのは自分だとばかりに・・・

違うんだ・・・
あの頃から、俺は何にも変わってない。
大切なものが変わっただけだ。

「山本・・・」
「ん?」
「あの、あのさあ・・・・・・・・・・・・・・」
「ん?」
「うん、」
「うん?」
「うん、なんでもねえ。」
「あはは、おかしいなあ、獄寺は」
「うるせえよ」

そんな頼りない声を出さないでくれ、いつものように、以前のように、ムカつくぐらい真っ直ぐな声を 気持ちを 向けてくれ
そうすれば、そうすれば言えるのに
― これは自分が選んだ道だと ―

獄寺と獄寺の大切にしているものを一緒に守りたいからここにいるんだと。
そいう言いたいのに、
彼が後悔の念で自分の傍にいて、伝えたら、彼が去ってしまう気がして。

仕様がないから、代わりのように山本は死体を積み上げる。
この世の全部の敵を退けるから・・・だからその代わりに・・・

真正面からぶつかって、手に入れる勇気なんてもてなくて、取引のようなことばかりしている。

ごめんね、ごめんな、許して、だきしめさせて・・・

そして・・・

そして・・・

愛されて・・・

「ごくでらー?」
「んー?」
喉の奥からこみ上げてくる言葉を口にしない代わりに、一番大切な名前を呼ぶ。帰ってくる返事がうれしい。
もっと彼の声を聞きたくて、どうでもいい話をつづけてみる。

「明日はれるかなあ?」
「知るかバーカ」

なんでもないように返ってくる、その言葉が何よりも大切なんだ 
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