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下らなくも愛しい日常
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ごめんね、伝えたいんだけど伝わらないんだ

「ごめんな・・・」
人を殺すと、必ず静かな目で地面に向かって祈るように囁く。

ゴメンナ

自分は、そんな彼を見ながら、心のきしみに気付かないふりをして呆れた声を出すように最大限の演技をする。
「甘いんだよ、そんなんじゃいつか足元すくわれるぞ」
彼はゆっくりとこちらを向き、苦笑する。
「相変わらず獄寺はきついなあ」
その困った顔は以前の彼と同じで、錯覚しそうになる。
目線をずらして、彼の握る日本刀と、足元に転がる死体の数を無意味に数えた。
同じようでいて、確実に違うこの違和感。
「敵に同情してるようじゃ世話ねえな」

体中が痛い、今にもどこか裂けて血が噴き出すのではないかと思うほど。
体中が、心が、痛い・・・

煙草に火をつけるふりをして、ゆがみそうになる顔を隠した。
伸ばし始めた髪がサラリと額と目を彼から隠してくれる。
こちらに近づいてくる彼の足音に、緊張する。
ゆっくりと煙を吐き出して、目のゆがみを煙のせいにする。
傍らに立ち、気軽にぽんと肩を叩かれた。
「帰ろう、獄寺。早いとこツナに報告してやらなきゃな、あいつ、心配してたから」
「ああ、そうだな」
歩調を遅らせ、彼の斜め後ろに立って、彼の背中と横顔をじっと見つめる。
いつからだったか、この位置が、彼を見つめれる唯一の立ち位置になった。

だって、まっすぐ目を見たりして、その目に嫌悪や、後悔の色を見つけたら自分はもう二度と立ち直れない。

髪をかき上げるふりをして、にじんだ瞼をごまかした。
自分から後ろに立ったくせに、振り返ってくれない彼にいらだちを覚えて、そんな自分を嫌悪した。

彼の背中は広く、頼りがいがあり。彼の掌は大きくて硬く、それがバットを握ってついたのものなのか、剣を振りついたものなのか、判断するのは困難だった。
だが、このまま時が過ぎていけば、彼の掌にある豆は、すべて剣を振ったものになるだろう。
彼はもう二度と、バットを振ることはないのだから。

「山本・・・」
「ん?」
「あの、あのさあ・・・・・・・・・・・・・・」
「ん?」
「うん、」
「うん?」
「うん、なんでもねえ。」
「あはは、おかしいなあ、獄寺は」
「うるせえよ」

この世界に引きづり込んだのは自分で、この世界でしか生きれなくしたのも自分だ。
そんな幼稚な優越感で、山本の手を血まみれにして・・・

ゴメンナ


本当は自分こそ言いたい。
一回でいい、謝りたい。
山本が当たり前のように示してくれたやさしさの上に胡坐をかいていた事実を

だけど、そんなことできなくて、そんな勇気は持てなくて。

代わりのように簡単に山本は転がる死体に、その言葉を投げかける。
この世界に生きて死んだ人間達に、多くのやさしさを振りまいて。

そして、やっぱり何も言えなくなる。また全部山本のせいにして。

ごめんね、ごめんな、許して、こっちをみて・・・

そして・・・

そして・・・

愛して・・・

「ごくでらー?」
「んー?」
背中越しに掛けられる言葉、それをなんでもないように返す。
「明日はれるかなあ?」
「知るかバーカ」

やっぱり何にもいえないまま・・・
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