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下らなくも愛しい日常
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なんとなく付けたTVから、一昔前のラブロマンス映画が流れてきた。
他に見るものもなかったのでなんとなくそのままリモコンをおいた。

―この俳優の名前、なんだって…

黒い髪に黒い瞳のしなやかな体をもった俳優が女優に優しく微笑みかけていた。

―全然違うな…

脳裏によぎる黒い髪と黒い瞳のヒットマンが浮かべる微笑みは、氷の様で、気まぐれに伸ばす手はいつだって同じくらい唐突にこちらを突き放す。

情熱的な音楽の中で、男女がそれぞれの想いを語る。
かわいらしい女優の柔らかそうな肢体を男優がそっと抱きしめる。

ランボは手に持ってきたカプチーノを一口飲み、ゆっくりと瞬きをする。

映画はどんどんストーリーを進めていき、想い合っていたはずの男女がそれぞれすれ違いを始める。
上手く伝わらない想いにお互いが焦れ、時間ばかりが過ぎ、
そして、
とうとう別れの日が来る。

素直に言えなかった言葉、伝わらない想い、心は結局重なり合うことはなく、絡み合ったと思ったものは幻想だった。
『欲しいものを欲しいと泣きじゃくる素直な子供みたいに泣けたらいいのに』
そう言いながら過去になってしまった関係に女優は美しい涙を流していた。

ランボはカプチーノをもう一口飲みたいと思ったが、カップの中はからになっていた。
立ち上がるのもおっくうで、そのままソファにもたれかかる。
映画の内容はいまいちよく覚えていない

「退屈だ…」

昔だったら感動したであろうラブロマンスは古臭さが先に立ち、なんとなく感情移入できないまま、
最近はあまり大きく感情を動かすこともなくなってしまった。

そういえば、昔は泣いてばかりいたな。
いつになったら枯れるのかと思うほどに涙は流れて、
欲しいものはなんでもその場でねだって。思ったこともすぐに伝えて。
わらって、泣いて、怒って…
毎日が忙しかった。

なんとなく、黒いヒットマンに会いたくなって、携帯電話に手を伸ばして止めた。
決定権はあちらにあった。
たとえば、もし明日会って、『お前とはもう二度と寝ない』
そう言われたら、ランボはただ『わかった』とうなづくだろう。

相手の気持ちを考えずに自己主張するほど子供じゃないし、
ましてや、映画の中の男女と違い、付き合っているわけでもない。

ランボはやっぱりもう一杯カプチーノを飲みたいと思った。
それでもソファにもたれた体は動かないままだった。
そっと手を合わせ、宙を見上げたまま目を閉じた口の上にそっとかざし、

そういえば、とふと頭によぎった想いを反芻した。

泣き虫と言われなくなったのはいつからだったろう?

もう、最近では泣き方すら忘れてしまった。


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