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下らなくも愛しい日常
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―うるせえよ!!
言うたびに気管が焼けつくように痛む

―触るなよ!!
つかまれた腕がやけどしたように熱い

―下らねえ。
彼の言葉を否定するたびに、目頭が熱くなる。

―暑苦しいってんだろ?!
抱きしめられるとどうしていいかわからない。

―もう、勘弁してくれ。
とうに思考回路は焼けただれ、もう何も考えられない。

「ごめんな?獄寺、そんなに逃げねえでくんない?」

優しく覗き込むように許しを請う相手に素直になることもできない、
きつい言葉を吐きかけ、優しい腕を拒絶して、面倒くさそうな態度をとる。

「じゃあ、今日は俺帰るな?」
そういうと山本は驚かさないように腕を解き、2歩後退してそのまま背中を向けて夕闇に溶けていく。
こちらを振り返ることもなく。

お願い、帰らないで、傍にいて、優しい言葉をかけて。
素直に言えるはずもなく、かといって立ち去る山本の後ろ姿を直視することもできず、
唇を噛んで下を向く。
不意に制服のポケットに入れた携帯が鳴り響いた。
とっさに出して相手を確認もせずに送られてきたメールを開く。
『獄寺』
メールにはそれだけが書かれていた。
驚いて顔をあげると、
行ってしまったはずの山本が携帯を片手にゆっくりとこちらに近づいてくる。
視界が歪む。
喉にこみ上げてきた何かをこらえていると、
柔らかい体温にそっと包まれる。

「獄寺のこと、すげー好き」

何か言い返そうと思って開いた口からはヒュっという嗚咽を飲み込むようなかすれた音しか出ないで、
何度か口を動かしても、やっぱり言葉は出ないまま、
何も言えないままに、
そっと山本のシャツの裾をつかんだ。

どうかお願い、離さないで、諦めないで、離れていかないで。

自分から追いかける勇気はまだ持てないまま。
祈るような気持ちで指先に力を込めた。
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