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下らなくも愛しい日常
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「dolcetto o scherzetto?!」
「は?」

唇に甘い…

「ごまかしたって駄目だぞ!!dolcetto o scherzetto?!(お菓子をくれなきゃいたずらするぞ?!)」
「アホ牛、イタズラしたら殺すぞ」
10月31日、冬の訪れを感じさせるように、日々色づいてくる空気が冷たい。
だが、室内はそんな外の空気を感じさせないように、空調は23度に保たれて快適だった。
そんな室内の中で獄寺は綱吉に頼まれ、ランボのボックスの修行に5年前から付き合っている。
いやいやではあったが、綱吉の頼みだと最初に付き合ってから、だらだらと5年間も続いてしまっていた。
本能と直感で動こうとして失敗するランボに、獄寺のデータや基礎を基本とした教え方は合っていたようで、今では戦い方は獄寺、日常的な常識はフウ太が家庭教師を務めるというように分業がなされていて、いまさら止めたいとも言えない。
今も、ランボにやる気の炎の適正なコントロール方法について理解させるための教材を作成しているところだった。
「だって、ハロウィンだよ?!今日はハロウィンなんだよ?!ランボさんにお菓子をあげるべきじゃないのかしら?!」
相変わらずウシガラの服を着たランボは獄寺の”殺すぞ”の一言に怯えながら必死に言いつのる。
獄寺はPCから目をあげずに、ハロウィン?と繰り返した。
「え?獄寺ハロウィン知らないの?」
今度はランボが驚く、獄寺はPCを見たままキーを素早く叩き、何かを表示させてから
「ああ、commemorazoino die defunti(死者をしのぶ日)の前夜祭のことか」
「・・・」

何やら泣きそうな顔をして黙りこんでいるランボに、獄寺は視線をあげ、しょうがないだろというように続けた。
「イタリアじゃあ、ハロウィンなんて習慣ねえんだよ。キリスト教圏ならどこでもやってるわけじゃねえんだ。とくにこの辺じゃバチカンがバカ騒ぎを歓迎しねえからな。」
だから、お菓子をあげるだの、仮装する習慣は知らなかったのだと言う。
ランボは日本で過ごす時間が多かったので、お祭り好きの奈々あたりが教えたのだろう。
なおも不満そうな情けない顔をしているランボに大体仮装してねえだろ言えば、今度は必死に
「ウシだよ!!ウシのお化けだよ!!」
と言いつのる。
「ウシのおばけって、ミノタウルスか?」
「何それ?ランボさんそんな奴知らないもんね」
「ああ、これだよ。」
また再度キーボードを叩き、ギリシャ神話の中からミノタウルスのページを見せてやる。
トコトコと獄寺の横に回り込み、覗き込んだ画面には、顔だけ牛の恐ろしい怪物の姿が映っている。
その上、ミノタウルスが迷宮に閉じ込められ、最後には殺されてしまう下りを読むと、半泣きになった。
生まれながらに疎まれる。閉じ込められて、だれにも愛されないで、抱きしめられないで、冷たい迷宮の中で殺されてしまう。
とても淋しい、悲しい気持ちになって、ランボは獄寺の腹部に腕を回してギュッとしがみついた。
獄寺は温かかった。

「おい、人のシャツに鼻水つけんな」
「鼻水じゃないもん」
「なんでもいい、とにかく離れろ」
「やだ」

はあ、と獄寺はため息をつくと、ランボは怒られると思ったのかビクっと肩をゆらす。
そんなランボを見下ろし、くせ毛でくるくるとウェーブするふかふかの頭を軽くはたくとおいと声をかけた。

「さっきのセリフもう一度言え」
そろそろと顔をあげたランボは一瞬何のことかわからずきょとんとするが、その後抱きついたまま
「dolcetto o scherzetto?!(お菓子をくれなきゃいたずらするぞ?!)」
と叫んだ。
そんなランボをやれやれと見下ろし、ほらよっと獄寺はポケットにあった飴玉を口に放り込んでやった。

それはとても甘い幸せの味。

冷たい迷宮じゃあ生きていけないから
ミノタウルスだって、だれかが抱きしめてあげればよかったのにね。
そうすれば、温かさに気付いて
愛をあげることも、もらうこともできたのに。



遅くなりました…ハロウィンネタ。
イタリアではあまり祝う習慣がないそうです。
ランボと獄寺はどんな関係でもつぼです。






 
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私はあなたのためにある

いつだって、何回だって言うよ。
それをあなたが必要としているなら。

ミルフィオーレとの戦いの中で、疲労がたまって行くみんなを少しでも力づけようと、ハルは京子やビアンキと共に料理や洗濯、その他もろもろの家事を一手に引き受けた。
大変なことも多かったが、京子やビアンキと一緒にいる時間が増え、まるで合宿のような楽しさも増えた。
その上、大好きな綱吉と一緒にいられることが何よりうれしかった。
ただ、綱吉と京子が一緒にいる場面を見ることも増えたけれど。

「ツナさん!差し入れです!」
「ツナ君、がんばってね」
「京子ちゃん!ハル、ありがとう。ごめんね、いつも雑用押しつけちゃって」
「そんなこと全然です」
「ツナ君たちこそ、特訓で大変なんだから」
「京子ちゃん・・・」

なんでもない会話の中でつけられる、差、それに気付いていないほど、鈍感ではない。
うれしそうに笑う綱吉と京子、今はまだあけられているが、そのうち二人で世界が閉じられる日が来るかもしれない。

「つらくないの?」
「ハヒ?」
「ハルよ、愛する人の隣に、自分以外を想像する生活、つらくないの?」
はっきりときつい言葉で言われる内容にハルはちょっと困ったように笑う。
「気づいていないわけではないでしょ」
「はい」
なんと言えばいいだろう?
上手く説明できる自信がなく、少しの間思案する。
「わかってるんですよ、ツナさんがどこに向いてるかぐらい。でもね、ツナさん、自分を好きな人が必要な人なんです」
綱吉は他人のために戦う人だと思う。その想いは、獄寺や、山本、その他の仲間たちにも向けられているだろう。だが、彼らは仲間であり、綱吉を守るべき楯でもあった。
彼は生い立ちから優しさと紙一重の優柔不断さも持っていた。いつでもコンプレックスを抱え、痛みを知るからこそ、彼はあんなにも困難な状況で戦えるのだ。
「たまには、息抜きも必要なんだと思うんです」
彼は愛されることに慣れていない。だからいつでも愛情を必要とし、同じだけ分け与えている。
だが、与えるだけでは枯渇する。無条件で、愛していると、なんでも受け入れて、許してあげる存在が必要なのだ。
自分しかそれが出来ないのであれば、自分が出来る間は、そのポジションを誰にも渡すつもりはない。
ビアンキは、愛しそうな、悲しそうな瞳でハルを見つめ、
ハルの頬にそっと自分のそれをすりつけながら囁いた。
「あなたは絶対カッコいい女になるわ」



「あ、ハル、リボーン知らない?」
「リボーンちゃんですか?さっきビアンキサンとどっか行きましたよ」
「え~なんだよ、わかったら知らせに来いとか言ってたくせに。イテテ」
ぼやいて動かした手に怪我があった。
無意識で動かして血が出てしまったのか、包帯に血がにじむ。
「わあ!!大変、手当しないと、包帯直しますからちょっと待っててください」
あわてて救急箱を持ってくると、痛がる綱吉を押さえて血に汚れた包帯やガーゼをとる。
カギ状に割かれた皮膚が痛々しい。
「ごめん、こんなの見せて」
気遣う言葉が痛い
「いいえ、気にしないでください、未来のマフィアのボスの妻になるんですから!」
「なんだよそれ」
否定も肯定もしない、決定的な言葉も言わない、そんなあなたの態度が、うれしくて、痛い。
「ふふふ・・・」
「変なハル」
それでも、好きだといわれるたびに、愛情を示されるたびに、安堵するような表情をする、強くて弱いあなたが好きだから、

「ツナさんが好きですよ」

あなたが私の言葉が必要なくなるまで、何度でも言うよ。

「ねぇリボ-ン、最近よく思い出すんだ」

呼び出した執務室の机の上で、軽く腕を組んで綱吉は目の前の漆黒の少年に声をかけた。

細身のシルエットのダ-クス-ツに、しなやかな少年特有の危うさをもった身を包み、隙なく整えられた髪に続く秀麗な額から頬にかけてのラインはすべらかに美しい。その中で一際異彩を放つのは黒曜石の様な瞳の老齢した深みだった。

15年前君と初めて会って、それからは怒濤の日々だったなぁ、獄寺君とか山本とかと友達になるなんて想像もつかなかった。ディ-ノさん見たいに格好良い人が兄代わりになるなんてね。父さんの門外顧問発言には本当に驚いた。ビアンキには何回殺されかけたか。君の愛人はいつも僕を恨んで来るのはなんでかな?」

目線をこちらに一度向けただけで、後はゆったりとソファに腰掛けたまま何の反応も示さない。

だが付き合いの長い綱吉にはそれで充分だった。組んでいた腕を解き、話続ける。

「あんなに子どもと触れ合ったのも最後の経験だね。まぁあまり一般的な子育て経験では無いけれど。可愛かったなぁ同じ位憎たらしかったけど…」

そこで一旦言葉を切り、カプチーノを一口飲む。口の中に柔らかいミルクの風味が広がり、誰かを思い出させる。

「君は、あの頃から僕の最高で最悪の家庭教師だよ。むちゃくちゃで、無理ばかり言う。一介の中学生がマフィアのボスになるなんてね、誰が想像したろう。厳しかったけど、無意味な厳しさではなかった。何時だって理由があって、正しかったよね。」

「お前はダメツナだからな」

ハハッて軽く笑う。昔を懐かしむのは時が経ち、年を重ねた結果だ。頼り無い細い腕はこの数年でしっかりと筋肉がつき、体も年相応に厚みをました。顔立ちは相変わらず柔和だが、表情に深みが増したといったのは兄貴分のディ-ノだったか。
その柔かな顔をゆがませ、うつむく。

「ねえ、リボーン」

意味もなく繰り返し呼んでしまう、その名前の意味を察してくれ。

「僕は、ランボも愛しているよ」

今日あった、ランボは背中をかばっていた。一週間前にも、そして、一か月前には足を引きずっていた。
綱吉たちには、わからな。リボーンのいらだち
リボーンは呪いが解けた後、一瞬大人の姿になったかと思うと、徐々にまた幼い姿に戻って行った。
そして、2歳程度で止まり、それからは、通常のスピードで、成長しているようだった。
結局、リボーン達アルコバレーノは、育ち直していく道を示されたのだ。
赤ん坊の姿のリボーンしか知らない綱吉たちには、その苦悩はわからない。
しかも、一時とは言え、元の年齢の体に戻った感覚はどうやったら体から抜けるのだろうか。
膨大な知識と経験。それにいつまでたっても見合わない体格。
その違和感。虚無感、無力感
それらをどうにか、ランボを傷つけることで対処している。
止めることなどできなかった。

ねえ、君は、どれくらいの孤独の中にいるの?

リボーンは綱吉たちにはその苦悩を欠片も見せなかった。
その代わり、ランボにだけはつらくあたった。

何も推し量れない綱吉たちには何も言うことが出来なくて、
それでもランボもリボーンも愛している。どちらもかけがえのない存在なんだ。
そんな上滑りする言葉で、制止を呼び掛ける。
意味はないと知りながら。

「ねえ、愛してるんだよ。リボーン」

どんな姿だって、君は君だ、そう言えたらどんなに・・・
抱きしめたいのに、伸ばした手をどうすることもできない。
「ごめんな・・・」

人を殺すたびにつぶやく、
ゴメンナ
あんたのこと見ても、どんな無残な死にざまさらされてても、何にも感じれないんだ。
どんな状況でも、心に浮かぶのは一人のことだけで。

「甘いんだよ、そんなんじゃいつか足元すくわれるぞ」


苦々しい声に振り向く。厳しい言葉をつぶやいても、彼は誰より優しいことを知っている。

「相変わらず獄寺はきついなあ」
そんなに一人で突っ張って、高くてきれいな所にいて、周囲を心配して、どれだけの負担を背負っているんだろう。
何時だって彼はだれかのための戦いをする。敵のことすら必死に認め、無駄な痛みを与えず、一瞬でその苦しみが終わるよう、最大限の努力をする。
そんな風に想われる敵にすら嫉妬する。
そういえば、今日はどれだけ殺したのだろう?最近その感覚すら危うい。
どうでもいいからだ。
自分の大切なもの、獄寺や、獄寺が愛するボンゴレに刃向かうものなど、どうでもいい。


「敵に同情してるようじゃ世話ねえな」


なんとなく、転がる死体の数を数えていると獄寺がつぶやく声が聞こえる。

まるで山本を気遣うような響きに、呼吸が苦しくなる。
そんなに辛そうな顔をして、同情しているのはどっちだよ・・・

傷ついて血を流しているのは獄寺の方なのに。
煙草に火をつけるためにうつむけた顔は歪んでいた。
前髪が顔の半分を隠しているが、山本には獄寺が迷子になって途方に暮れた子供のように感じた。

泣けばいいのに・・・
そうすれば、慰められる。

抱きしめたくなってそっと近づいてみる。

間近に見た顔は、つらそうで、思わず伸ばした手を握り、それからわざとらしくないよう、これ以上傷つけないよう、そっと傍らに立ち、軽くぽんと肩を叩いた。

「帰ろう、獄寺。早いとこツナに報告してやらなきゃな、あいつ、心配してたから」
「ああ、そうだな」
綱吉の名前を出したとたんにほっと肩の力を抜いた獄寺に、殺意にも似た気持ちがわき起こる。
自分にはそんな顔むけてくれないくせに!!!
両肩をつかんで、押し倒して、罵って、無理やりすべて壊したくなるような激情を抑えるために、
獄寺の顔を見ないよう、背を向けた。
それでもすべての神経が、彼に向う。

本当は抱きしめたい、慰めたい、自分の方を見ろと言いたい。
でも、獄寺が万人に向ける憐れみや同情の視線を見てしまったら、自分は何をするかわからない。
壊してしまうかもしれない。

重いため息をごまかすために、夕日が落ちる空を見上げた。
彼が、隣に立ってくれればいいのに。

自分が、刀ではなく、バットを握っていたころは、いつでも隣に立っていた。先に行くと、生意気だとか、山本のくせにとよくわからない理屈をこねては、隣に立ち、笑っていた。
だが、いつからだったか、刀に持ち替えた時、喜んでくれると思って覗き込んだ獄寺の顔にひどく傷ついた色を見つけたのは。
まるで、自分が山本から大切なものを奪ったかの様に・・・
それから、獄寺は加害者のように懺悔の気持ちを向けてくる。山本を歪ませたのは自分だとばかりに・・・

違うんだ・・・
あの頃から、俺は何にも変わってない。
大切なものが変わっただけだ。

「山本・・・」
「ん?」
「あの、あのさあ・・・・・・・・・・・・・・」
「ん?」
「うん、」
「うん?」
「うん、なんでもねえ。」
「あはは、おかしいなあ、獄寺は」
「うるせえよ」

そんな頼りない声を出さないでくれ、いつものように、以前のように、ムカつくぐらい真っ直ぐな声を 気持ちを 向けてくれ
そうすれば、そうすれば言えるのに
― これは自分が選んだ道だと ―

獄寺と獄寺の大切にしているものを一緒に守りたいからここにいるんだと。
そいう言いたいのに、
彼が後悔の念で自分の傍にいて、伝えたら、彼が去ってしまう気がして。

仕様がないから、代わりのように山本は死体を積み上げる。
この世の全部の敵を退けるから・・・だからその代わりに・・・

真正面からぶつかって、手に入れる勇気なんてもてなくて、取引のようなことばかりしている。

ごめんね、ごめんな、許して、だきしめさせて・・・

そして・・・

そして・・・

愛されて・・・

「ごくでらー?」
「んー?」
喉の奥からこみ上げてくる言葉を口にしない代わりに、一番大切な名前を呼ぶ。帰ってくる返事がうれしい。
もっと彼の声を聞きたくて、どうでもいい話をつづけてみる。

「明日はれるかなあ?」
「知るかバーカ」

なんでもないように返ってくる、その言葉が何よりも大切なんだ 


何もしたくなくて、部屋の隅でぼんやりと空を見ていた。
最近そんなことが多い。
幼いころは、世界中がまぶしくて、じっとしていられなくて、いつも騒ぎまわっていた。
そんな中で、あの柔らかい掌でなでられたり、抱きしめられるときだけ、じっとしていたのを覚えている。
柔らかくて、暖かくて、いつまでもその掌が自分のためにあるものだと思っていた。

トントン
軽くやさしいノックの音とともに、柔らかい声が響いた。
「ランボちゃん、いますか?」
「あ、ハルさん?」
今まで思い出していた人の声に驚いて、ランボは腰を浮かす。
そのままあわてて、ドアの所へ飛んでいき、ドアの前に立っているであろうハルを驚かさないようにそっとノブを回して、引いた。

「コンニチワ、ランボちゃん?今忙しいですか?」
「いいえ?忙しくないです。」

―忙しくても、あなたの頼みならなんでも聞きます。

「じゃあ、一緒に市場に行きましょう!」
「はい」
いまだにイタリア語が不自由というハルは、日常的な買い物にランボを誘う。
唐突とも思える満面の笑み付きの提案に、ハルさんらしいと苦笑しながらランボは二つ返事で引き受けた。
平日の市場は程よくすいていて、おちついて品物を選びやすい。しかし、ハルはあちらこちらからかかる呼び声に、挨拶をしたり、断ったり、返事をしたり、商品を買う傍らとても忙しそうだった。
「ハヒ~、イタリアの市場の人はみなさん元気ですね。」
「みんなハルさんと話したくってしょうがないんですよ」
「ランボちゃん、いつからそんなお世辞を言うようになったんですか?」
「お世辞じゃないんですけど」
「だめですよ~そんなんじゃろくな大人になりません!」
わざと怖い顔になって言うハルの頭の中にいる大人は誰だろう?
ハルの心を占める大人は・・・

―この人のや優しさはすべて自分のためだと思っていた。

それが万人に向けられるものだとわかった時、最初の喪失を迎え
この人の唯一になれないとわかった時、二度目の喪失を迎えた。

そして
「ハルさん、荷物重くなっちゃいましたね。」
「そうですね~野菜とか、果物とかいっぱい買いましたからね。」
―あの人に栄養をつけてもらいたいから。
そんな声が聞こえてくる気がした。胸の痛みをわざと無視してランボは続けた。
「荷物、持ちましょうか、ハルさん、手が赤くなっている」
大好きな柔らかい手、せめてそれを守る存在になりたかった。
「大丈夫ですよ、ランボちゃんこそ、小さいのにそんなに荷物持たせてしまってごめんなさい」
こちらを見ないまま、笑顔で申し出を断ったハルは、少し先にある駄菓子屋を見つける。
「ランボちゃん、疲れたでしょう?手伝ってくれたお礼に、ハルが飴玉買ってあげます」
小さいころみた笑顔と変わらない笑顔で、態度で、ハルがそう提案した。

ハルさん、俺、身長はとうにハルさんを抜いたんだよ。
飴玉をなめることもなくなったんだ。
何人かの女のことも付きあったし、エスコートもできるようになった。
もう、ハルさんの荷物をすべて持つことだって難なくできるんだよ?
あなたを、守ることだって・・・

「いつもお手伝いありがとう」
「どうしたしまして、ハルさん」

あなたを守るすべを認められないとわかった時、三度目の喪失を迎えた。

停滞する関係性に、どんな未来があるというのだろう。
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